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No.064『愛情の押し付けをやめる』

他人が喜ぶこと、他人の役に立つことをしてあげるのは、よいことに決まっています。
しかし、その言葉の表面的な意味だけにとらわれると、大きな落とし穴にはまってしまいます。

女性に多いのが、「私は、恋人に尽くすタイプです」と言う人です。
もちろん、尽くすこと自体は大いに結構なのですが、それを売り物のようにアピールしてしまうと、かえってマイナスのイメージをもたれて敬遠されたり、ごう慢な男性に利用されたりする危険性がありますので、注意が必要です。
本当に「尽くしている」人は、尽くしているということは意識していないでしょう。
わざわざ「私は尽くすタイプです」と公言する人には、えてして、「さあ、私はこれだけのことをしてあげましたよ。それをあなたは、どう評価してくれますか。何をお返ししてくれますか」という恩着せがましさが感じられるものです。
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また、恋愛がうまくいかなかったとき、自分が傷つきたくないから、「私は精一杯尽くしたのに、相手がそれに応えてくれなかった。私に落ち度はない。悪いのは相手だ」という逃げ道を用意しているようにも思われます。
本当は「自分のため」であるのに、当人にはそういう意識はまったくなく、「心から尽くしている」と思い込んでいるので、結局は「なぜ私の気持ちを判ってくれないのか」と他人を責めることになってしまいます。

もちろん、私たちは皆、エゴをもった人間ですので、完全に「何の見返りも求めず、他人のために尽くす」ことなど、不可能に近いことです。
「自分のため」なら、それでもよいのです。それを「人のため」などとごまかさず、「本当は自分のため」とはっきり自覚するだけでも、よけいな悩みや苦しみから解放されるはずです。

さらに悪いのが、子供に対して、「あなたのためを思って言っているのよ」という言い方をする親です。
「ああしなさい、こうしなさい」と、子供にガミガミ注意ばかり。そういう親の心の底には、子育てに対する不安があり、「ろくに子育てもできない親だとまわりから見られたくない」という怖れがあります。

勉強は、「教養を深め、人生を豊かにするため」にするものですが、ある親は、ただ「いい学校に入るため」に勉強することを子供に強要します。
「子供をどういう人間に育てればよいのか」という自分なりの指標がないので、とりあえず偏差値の高い学校に入れておけば、立派に子育てをしたように見せかけられるだろうと考えるのです。
子供には「あなた自身のためなのよ」と言いながら、実は、親の世間体のためなのです。

子供は、親が本当は「見栄や世間体のことしか考えていない」と感じ取っていても、「あなたのため」と言われれば、言い返すことができません。
精神の未発達な子供にとって、「あなたのため」という言葉の前では、すべてが正当化されてしまいます。親が子供に反論する余地を与えないようにするには、とても便利なずるい言葉です。
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子供は、親からの愛情を感じられず、密かに反感を抱いていることに対して、罪悪感をもってしまいます。「あなたのため」という言葉の表面的な意味に惑わされて、「なぜ自分は親の愛情に素直に感謝できないのだろう」と、自分を責め、「自分は、親を悲しませる悪い子だ」と思い込んでしまいます。

「親の言いつけに従っているかぎりにおいて、自分は愛してもらえるのだ」という、「条件つきの愛情」しか感じられない子供は、不幸です。
そういう子供は、自分の喜びのためではなく、「親の期待に応えるため」だけに必死で虚しい努力を続け、その結果、学校の成績だけはよいけれども、自らの意欲で行動することを知らず、他人の顔色ばかりうかがい、人生に何の楽しみも見出せない人間に育ってしまいます。

親は、本当に子供のためを思っていても、いえ、思っているからこそ、「あなたのため」という言葉は使うべきではありません。
「あなたのため」という言葉は、子供を追いつめ、傷つけてしまいます。
親が「子供を受け入れる」前に、「子供に受け入れてもらう」ことを強要する言い訳なのです。

そういう親も、決して子供を愛していないわけではなく、ましてや、わざと子供の心を踏みにじる気などなく、本気で「子供のため」と思い込んで、「立派に育てなければ」と、精一杯がんばっているのでしょう。
しかし、まさにその「悪気がない」という点が、もっとも罪深いところです。

子供にとって、「親は、心から自分を愛して育ててくれた」と感じられなければ、やはりそれは愛情とは呼べず、子供には心の傷となって残ってしまうのです。本当に「子供のため」を思うのなら、親の立場でものを言うのではなく、子供の気持ちになって考えることを優先させるべきではないでしょうか。

両親が子供に教えるべきもっとも重要なことは、「あなたは、私たちに望まれてこの世に誕生した」「どのような人間に育とうとも、あなたは、私たちの子供であるというだけで、無条件で愛される価値がある」ということです。子供の心に、「自分は愛されている、信用されている」という揺るぎない安心感を与え、「自分はこの世に存在する値打ちがある」という確固たる自己価値感を形成させることです。

勉強ができてもできなくても、愛情をいっぱいに受けて育った子供は、自分の価値を信じ、自分を大切にできるようになります。自分を大切にできる子供は、「勉強しなさい」などと強制されなくとも、自分の頭で「何を学びたいか」を考え、自発的に行動するはずです。
親は、子供のそうした心の成長こそを信用するべきではないでしょうか。

善意や愛情は、受け取る側が感じるものです。与える側が押し付けるものではありません。押し付けが、かえって相手を苦しめることもあるのです。
(おわり)

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こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.060-069
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