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No.244『幸せを実感するために』

「友情は喜びを二倍にし、悲しみを半分にする」とは、ドイツの詩人・劇作家であるシラーの言葉です。
このことは、友人同士の付き合いにかぎらず、恋人や家族など、あらゆる人間関係にあてはまるのではないでしょうか。
うれしいことがあったときには、自分ひとりでよろこぶよりも、ともによろこんでくれる人がいたほうがうれしさも増しますし、悲しいことを他人も一緒に悲しんでくれれば、心はいくぶん安らぎます。

人が人を求めるのは、感情を共有したいという欲求があるからなのでしょう。
人付き合いの意義は、まさにこの点にあるといえます。
ただし、気をつけておかなければならないことは、「たとえ他人に判ってもらえなくても、よろこびが減るわけではないし、悲しみが増えるわけでもない」ということです。
他人も一緒によろこんでくれれば、自分のよろこびは増大しますが、それはあくまで「付け足し」にすぎません。
自分の感情を自分の心でしっかり実感できるということが、何よりも重要なのです。
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旅行に行っても、自分の目で名所や街の風景をしっかり見ようとせず、写真を撮ったりビデオカメラを回したりすることばかりに専念している人がいます。店に入っても、現地の人たちと触れ合おうとせず、おみやげやブランド品などを買いあさるだけで終わるのです。
そういう人はきっと、「旅行を楽しむ」ということが、自分の心の中だけで実感できないのでしょう。他人に写真やビデオを見せ、また現地で買ったものを見せびらかせ、他人がうらやましがってくれてはじめて、「旅行を楽しんだ」ことになるのです。

もちろん、旅の思い出を記録に残しておくのはかまいませんし、買い物をするのが悪いというわけでもありません。
ただ、それは後でよろこびを再確認するためのものであって、旅行の本来の目的ではないのです。

「幸せやよろこびが実感できない」「自分に自信がもてない」と嘆いている人は、「自分ひとりで実感しても、他人に判ってもらえなければ意味がない」と思っているのではないでしょうか。
しかし、他人に判ってもらえなければ感じられない幸せなど、本当の幸せではありません。そんな見せかけの幸せをいくら求めても、自分の心で実感することはできないのです。

「好きな人への好意をなかなか伝えられない」という人は、「相手も自分に好意をもってくれなければ、自分の好意もまったく無駄になってしまう」と思っているのです。
人を好きになれば、自分も相手から好かれたいと思うのは当然のことですが、「自分も好かれること」が人を好きになることの本来の目的ではありません。

他人を大切にすることは、自分を大切にすることです。
人を好きになれば、他人を思いやる気持ちが生まれ、自分も恥ずかしくない行動をとろうという向上心が芽生えます。
「人を好きになったおかげで、自分がどう変わったか」を数え上げてみてください。それだけでも、充分に人を好きになった意味があったと思えるようになるはずです。
自分も相手から好かれるということは、おまけのご褒美ぐらいに考えておいたほうがよいのです。
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他人の気持ちがどうであれ、自分の価値が減るわけではありません。
「他人が認めてくれればうれしいが、そうでなくてもかまわない」という姿勢で他人に向き合っていれば、人付き合いにおいて不安を感じることはないでしょう。
他人が認めてくれなくても、得をしなかったというだけで、損をしたわけではないのです。

自分の気持ちを抑えて何でも我慢すべきだというのではありません。自分の言いたいことは、きちんと主張してもよいのです。
ただし、「言いたいことは言った」、それでよしとしなければなりません。それを相手がどう受けとるかは、相手の自由です。
「言いたいことがはっきり言えない」のは、「相手の考えを改めさせなくてはならない」とまで考えてしまっているからです。
相手を変えようとする前に、「自分の気持ちよりも、他人の気持ちのほうが自分にとって重大である」という誤った考えを改めなくてはなりません。

自分が求めている幸せが、本当の幸せであるかどうかは、「他人に理解されなくても、充分に幸せだと感じられるか」と考えてみれば判ります。
幸せも、よろこびも、自信も、みだりにひけらかさず、心の奥でしみじみとかみしめるべきものです。
他人が共感してくれるなら、それに越したことはありませんが、本当に自分の心で幸せを実感できたなら、他人に判ってもらえるかどうかなどということは、どうでもよくなるのです。
(おわり)

ありがとう ロングセラー 45刷
こころのおそうじ。(だいわ文庫)
たかたまさひろ(著)
定価 770円(税込)

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メッセージ No.240-249
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